第八歩目

 いきなりだが、僕は至って普通の人間だ。
絶望する程に普通である。 無色といってもいい。
 
 自分のことを例えてみれば、まるで自分の身体すら見ること叶わずに、鏡の前で自分にペンキで色を塗ろうとする透明人間の様である。

 僕は緑が好きだ。 好みの色はある。
だから、僕は緑に固執することがある。
 自分自身に色がないから。 
 
 そうありたい。そう願うことに固執し依存する。

 僕は人とは違うと思って生きてきた。 
優れていると思ってではない。 むしろ劣等感を抱えて生きてきた。

 自分が普通である、無色であると自覚した時には僕はもう何もかもにも埋め尽くされていた。

 一個人を持つ人、持とうとする人に憧れた。

 君に憧れたのはきっとそれが理由だと思う。

 流れる川の中で、流されまいと自分を守る様に作ってきた(固執し依存してきた様々な)ものに埋め尽くされて呼吸も出来なくなっていた僕は、確かに君と出会い1度それらを手放すことが出来たのだと思う。

 でも、やはり僕には色はなかった。

 君という色の隣で、自分の色を探し続けた。

 君という色で染められてしまえばどんなに良いだろうと涙し続けた。

 不思議なことに僕は染まらなかった。

 誰かの色に染まることは出来なかった。

 無色である訳ではなく、僕は透明なのだと思った。

 今の僕の希望はいつか自分に自分の色を塗ることだ。
それまではどんなに滑稽でも良い。

 僕はいつだって、どこまでいっても誰かの為に生きてはいけないと思う。 
 だから優しくなんかない。

 僕は縛られてなんかいないよ。
自分で自分にしがみついているんだよ。

 別に親の事だって、先の事だって悲観してるわけではないんだ。
 
 ただ、今の世の中で僕は考えが甘かっただけだし、普通に生きることの難しさを理解していなかったってだけの話さ。

 今目指しているものを手に入れれば、きっと自分の色を見つけ、塗ることができる。もしくは受容できる。
 そんな気がする。
 だから、僕は立ち止まらない。 
 それだけの話さ。

 これを書いてやっぱり僕は愚かだと自分でも思う。